4.日本酒(清酒)
日本酒は米、水、酵母の3原料で個性が決まると言われています。3つの原料についての全体的なお話は次回以降に譲ることにして、話題を滋賀県に絞って米、水、酵母についてお話します。
(後半には滋賀県のユニークな酒を紹介)
滋賀県は自然に富み、米(酒米)と水(伏流水)に恵まれています。
酒米(酒造好適米)は「滋賀渡船」系図の通り、酒米の王様と言われる山田錦が、短稈渡船(滋賀渡船2号:福岡県産の渡船の純系分離で育成)を父方、山田穂(*)を母方として大正12年に誕生しました。さらに、滋賀県が作った「吟吹雪」と言う酒米があり、これは山田錦と玉栄の交配種で、昭和59年に誕生しました。山田錦の栽培し難さを改良する目的で開発され、酒造適正は山田錦と遜色がなく吟醸酒用として使われています。さらに特筆されるのは、酒米「日本晴」の作付け面積は日本一で、その検定基準米として野洲産の「日本晴」が採用されていることです。
(*)大岡越前守忠助が普請奉行を経て江戸南町奉行になる前に、伊勢神宮周辺を取り締まる山田奉行として就任していたその山田地区の産。
水(伏流水)は名水百選に2ケ所が選ばれています。旨い水の湧く処、それは泉神社湧水(米原市)と十王村(彦根市)の伏流水です。それに加えて、東側に伊吹山地、鈴鹿山脈、西側に比良・比叡山地、野坂山地に囲まれた盆地になっており、山々に源を発した河川の伏流水がこんこんと湧いています。因みに、お隣の京都府にも磯清水(天橋立)と御香水(伏見)の2ケ所があります。
4-6.滋賀県の酒の一覧
滋賀県の日本酒の生産量(2013年)は、4千KL弱、生産量1位の兵庫は14万KL弱となっており、生産量ベスト3の白鶴は6万KL、松竹梅&月桂冠は、何と5万KLで、単独銘柄でも滋賀県合計の10倍以上です。
滋賀県の地酒は、ソフトな飲み口で甘辛中庸のタイプの酒が多いと評されています。酒蔵は50を超えると言われているが、灘や伏見に桶売りし自社ブランドを持たない酒蔵も多いようです。その中で滋賀県酒造組合加盟の酒蔵は33社です。不完全ではありますが、それぞれの蔵で使用されている酒米と酵母(県産酵母に近江虹酵母KKK-9がある)を倉内さん(薬事部)にもご協力を戴き一覧表を作成しましたのでご覧ください。(※添付ファイル)
酒滋賀県の酒蔵 「酒米と酵母」.pdf (※添付ファイル)
一覧表に記載データーは、あくまで各蔵の主力銘柄のもので、この他にも一覧表に記載のない原料類を使用した銘柄が数多く存在します。
一覧表から分かるように、酒米では不明の1蔵を除く32蔵の内、27蔵(80%強)が「山田錦」(緑字)を大吟醸、吟醸酒に採用しており圧倒しています。滋賀県開発の「吟吹雪」(青字)も吟醸酒を含めて純米酒・本醸造酒まで10蔵(30%強)、作付け面積1位の「日本晴」(茶字)は14蔵(40%強)が採用しています。
酵母では、不詳の蔵13蔵を除く20蔵の内、14蔵(70%)が大吟醸、吟醸酒用に9号*(赤字:901号も同系)を採用しています。次に多いのが7号**(701号も同系)で5蔵(25%)となっています。県産酵母のKKK-9はまだ少ないが3蔵(15%)が採用しています。
*香露の酵母(熊本酵母):吟醸香(メロン、バナナなどトロピカルフルーツの香り)が素晴らしく吟醸王様酵母と言われ、全国の多くの酒蔵で採用されている。
**真澄の酵母(長野酵母):吟醸香(高級リンゴの香り)が素晴らしく、全国の多くの酒蔵で採用されています。比較的精米歩合の数値が大きくても(米をあまり削らなくても)良質の酒を醸す特長を持っています。
~トピックスを少しご紹介~
○ネーミングがユニークな酒蔵
<上原酒造>
クレオパトラのわすれもの(純米大吟醸)
甘酸っぱく爽やか、個性的でワイン のような、日本酒が苦手な人でも呑めてしまう酒。山田錦を50%削って醸した1,605円 (税込)/500ml
亀亀覇《かめはめは》凛(純米吟醸)
幻の酒米「亀の尾」を復刻させて醸した お酒。精米歩合53%、7号酵母使用、5年古酒(酒造年度:H10BY)
<笑四季酒造>
恋をするたびに
第2話 届かぬ想い(笑四季 特別純米生原酒):柑橘系の香り、甘 く切ない味。山田錦を精米歩50%、つる薔薇花酵母使用、日本酒度ー1.0(やや甘 口)、酸度1.75(やや酸味あり)。1,200円/720ml(税抜)、値段も手ごろ。
きりぎりす(笑四季 特別純米酒)
酒米に滋賀県信楽町産の「越神楽」を使用。 冷おろし、辛口。1,200円/720ml(税抜)、値段も手ごろ。
ぼくとせみ(特別純米酒)
酒米に滋賀県信楽町産の「越神楽」を使用。やや辛口。 1,200円/720ml(税抜)、値段も手ごろ。
<喜多酒造>
月夜のゆりかご(純米吟醸酒)
野洲市須原では、琵琶湖のコイ、フナ、ナマズなどの魚たちが、田んぼで産卵できる環境づくり「魚のゆりかご水田」に取り組んでいる。そこで取れたこだわりのコシヒカリで醸した酒。飯米のお酒特有の甘ダレを感じない上品な お 酒 に な っ て い る 。 精米歩合60%、1,500円/720ml(税別)
○醸造法がユニーク
<福井弥平商店>
雨だれ石を穿つ(萩乃露 特別純米酒)
酒米に山田錦と吟吹雪(精米歩合:5 5%と60%)を使用。十水(とみず)仕込み法(現在と比べて加える水を極端に少なくして 濃厚な状態で仕込む江戸時代の醸造法)で醸され、甘口ですが濃密にして爽やかな鮮烈な美味しさ。発売から連続して燗酒コンテスト(プレミアム燗酒)部門で金賞を受賞。日本酒度―3
(甘口)、酸度1.8(やや酸味あり)。1,350円/720ml(税抜)
<川島酒造>
大地の輝き(松の花 特別純米酒)
酒米に玉栄と日本晴(精米歩合:各60%) を使用。純米酒の原酒をカナダの氷河深層水で割った、米の旨味があり、コクがあり、透明感 のあるお酒。日本酒度+4(辛口)、酸度1.2(酸味なし)。ネーミングはともかく一度呑 んでみて!1,550円/500ml(税込)
○ANA国際線ファーストクラス機内酒(22年10月~23年3月、成田空港発便)
美冨久(美冨久酒造:空飛ぶ純米大吟醸)
山田錦を45%まで削り、野洲川の伏 流水を使用し、冷蔵庫で2年間熟成。日本酒度±0(甘辛度は中口)、酸度1.6(やや酸味 あり)、但馬杜氏入魂の芸術品。3,400円/720ml(税抜)
引き続きラベル(表、裏)の読み方、お酒の三大原料(米、酵母、水)を予定しています。
Mr.K
16回目ありがとうございます。
滋賀県の酒蔵のファイルまで見せていただき恐縮です。
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