2.ワイン(Wine)
肉料理には赤、魚料理には白と言いますが、それはグルメの言うことです。要は美味しく楽しく呑めればドチラでもいいのです。
遥か遠い昔、イエスが最後の晩餐で「わが血」と語ったと言われるワイン、優れたワインを指す言葉に「コメット・ワイン」があります。それは言葉どおり彗星に係っています。
俳人の小林一茶は、「人並みや 芒(すすき)もさわぐ ははき星」と今から約200年前の1811年に現れた大彗星を句にしました。同じ年に欧州の各国では実際にぶどうが大豊作となり、この年のワインはコメット・ワインと呼ばれ珍重されました。やがて大彗星の現れる年には香りのよいワインが出来ると言われるようになりました。
ワインの起源は、コーカサス山脈(グルジア)の南麓周辺で呑まれ始めたのが紀元前8,000年頃、そしてメソポタミア(南部シュメール)や古代エジプトで醸造が始まったのが、それから遅れること紀元前4,000年頃と言われています。
ワインは、赤、白、ロゼの3種に分類されますが、皆さんのほうが詳しいと思いますので、ごく簡単にお話をします。
①白ワイン
白ぶどうなど色の薄い果皮のぶどうを原料にして、発酵には果汁のみを使い醸造する。辛口から極甘口(デザートワイン)まで幅広い味が楽しめます。銘柄によっては、リンゴ、モモ、オレンジにそっくりな味のものもあります。よく冷やして(約10°C)で飲まれる。初心者におすすめ!
②赤ワイン
黒ぶどうや赤ぶどうを原料にして、発酵には果実を丸ごと使い醸造する。そのため果皮に含まれるタンニンや色素が抽出され渋味が強く、味は辛口のみで、コクとタンニンの含有量により、ライトボディーからフルボディーに分類されています。赤ワインを呑むと頭が痛くなることはありませんか!白ワインと異なり、ヒスタミンやチラミン(*)が多く含まれるため、個人差はありますが激烈な頭痛を起こすことがあります。
(*)活性アミン化合物で血管収縮作用があり⇒血圧が上昇⇒片頭痛発作が起こる。
③ロゼワイン
ロゼ(フランス語でバラ色)はピンクワインとも呼ばれます。色の薄い果皮のぶどうを原料にして、赤ワインと同じように果実を丸ごと発酵に使う方法、赤と白に使うぶどうの双方を原料にして混醸する方法、または、赤ワインの醸造途上で程よく着色した段階で、果皮を取り除く方法で造られます。赤ワインと白ワインの単純ブレンドは禁止されており、一般に長期熟成は行われません。新鮮なフルーツの香りが残り、さっぱりした味わいのものが多く、辛口から甘口のものがあり、白ワインと同様によく冷やして飲まれます。
変わり種ワインとしては、発砲ワイン(シャンパンなど)、貴腐ワイン、アイスワイン、酒精強化ワイン(シェリー酒など)、麦わらワイン(干しぶどうワイン)、氷結ワイン、濁りワイン、シュール・リー、ビオ・ワインなどがあります。この中から、貴腐ワインとアイスワインについてお話をします。シャンパンについては、第9回をご参照下さい。
<貴腐ワイン>
ワインの中でも珍重されています。写真は世界で初めて造られたハンガリーの 貴腐ワインのトカイ・エッセンシアです。フランスのソテールヌ、ドイツのトロッケンベーレ ンアウスレーゼと並び、世界三大貴腐ワインの一つです。一本のぶどうの木から一瓶しか造れ ないと言うその希少価値から「ワインの帝王(帝王のワイン)」と呼ばれています。濃厚でコ クがあり、香りの高い甘いワインです。まあまあのブランドでも、350mlの小瓶で5万円 以上もする高価なものです。しかし、フランスのソテールヌには3,000円前後のものもあ ります。高い=旨いとは限りません。勿論、国産の貴腐ワインもあります。
写真は貴腐ワインの原料になるぶどう(干しぶどう状の貴腐果)です。限られた気象条件の時 に、特殊なカビ菌(ボトリティス・シネレア:Botrytis cinerea)がぶどうに付着して、果皮 の内側にあるクチクラ層のロウ質を溶かし、保湿機能が壊され、水分が蒸発して糖度が上がり 貴腐果になります。貴腐果になり易いセミオン、リ-スリング(白ワイン用ぶどう品種)が使 われ、それを原料にすることで濃厚なコクと香りのある甘いワインになります。
<アイスワイン>
「貴族のワイン」と呼ばれる高級品です。貴腐ワインの香りはありませんが、濃厚さ、コク、甘さは決して負けない双璧の美味しさがあります。貴腐カビ菌ではなく、自然凍結させて水分を飛ばし濃縮したぶどうを原料にしたワインです。通常の1/8程度の果汁しか搾ることができず、同じ量のワインを造るのに8倍の原料ぶどうが必要になります。また、ぶどうの収穫作業も極寒の厳しい条件下となります。
ワインの原料となるぶどうは、代表的なものだけでも約50種があり、世界的に知られている品種として、赤ワインではメルロー、カベルネ・ソーヴィニオンなど、白ワインではシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどがあります。日本特有の品種には甲州、善光寺(白ワイン用)、マスカットベリーA、ブラッククイーン(赤ワイン用)があります。
通常、ワインはぶどうの表皮に付いた野生酵母で造られますが、気象条件が良くてぶどうの実りが良い年や反対に不作の年では、品質に大きなバラツキがでます。品質の安定と向上のため、必要により補完的に酵母を加えることがあります。
欧州の主要なワイン生産国、米国、チリ、アルゼンチンなどでは、ぶどうの品種や原産地、醸造方法を規定するワイン法がありますが、日本には存在しません。そのため、国際市場では「低質なワイン」と見られてきました。処が、海外要人を招く晩餐会で純国産ワイン(自国ワイン*)を振る舞うと、美味しさに驚く外国人が少なくないようです。クールジャパンとして売り込む価値があると察し、自国ワインの品質を政府が保証する新法「ワイン法」の制定に向けた準備が進められています。
フランスのワイン法に基づく格付けです。貼付ラベルには、生産者、原産地、ぶどう品種などが記載されており、高品質(AOP)に属するアルベール・ビショー シャブリ(白ワイン)を例にとると、生産者がアルベール・ビショーで、原産地がシャブリ(ブルゴーニュ)を表しています。(ぶどう品種は表示されていませんが、因みにシャルドネです)
*自国ワイン:日本で醸造されるワインは全て「国産ワイン」と呼ばれています。その中に国産ワインと自国ワイン(純国産ワイン)の2種類があることをご存じでしょうか?国内でぶどうを原料にして醸造すれば、堂々と「国産ワイン」と呼べます。処が、国内産ぶどう100%を原料にして造った自国ワインは、何と「国産ワイン」全体の6%程度に過ぎません。9割以上が国外産のぶどう果汁を輸入して、日本で醸造しているワインなのです。
次回(第13回)は焼酎についてお話をしようと思っています。
by Mr.k
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